COMPASS JAPANの友人より名古屋で開催されているCOP10の速報が届きましたので共有します。
10月22日現在のABS交渉の速報です。
連日の深夜におよぶ交渉にも関わらず、主要な論点は未解決のまま、交渉人の顔にも疲れが見えます。
今週末、土日を使って引き続き交渉をし、来週月曜に全体に報告、27日から開催される閣僚級会合に備える予定です。
本日は、遺伝資源の「利用」と「アクセス」に関する交渉が行われています。
これまで、カナダやオーストラリア、EUによる議定書=法的拘束力を持った国際ルールの意味をなくすような意見が続いています。
カナダにおいては、議定書草案の前文の先住民族の権利宣言についての言及でさえ、削除するよう意見がありました。
生物多様性条約が発行された1993年から現在まで、その目的の1つである公正かつ衡平な利益配分は達成されていません。
ABS交渉に関して、途上国の強硬な姿勢が報道されがちですが、
これまで資源を奪われ発展できず、
ABSは国際条約である生物多様性条約の目的であるにも関わらず、
先進国の協力がなく達成されてこなかった今、
なぜ、途上国側がこの議定書の中身に妥協しなければならないのか。
様々な条項に関する1部の先進国の、対策を講じる義務をなくすような言葉の挿入を、
なぜ途上国側が認めなければならないのか、疑問でなりません。
現在メディアや一般の方々の関心は、おおよそ議定書そのものが採択されるかされないかですが、
議定書の中身が意味のあるものになるかどうかが、本当の焦点です。
そして最終的、本質的には、気候変動枠組条約と同様、
世界的な課題である南北問題への政治的な解決ができるかできないか、が課題です。
会議中、何度もG77+中国がグループ会議を開いており団結力を高めています。
コペンハーゲンの教訓を生かし、
もう先進国が自分たちだけで支配できる世界が終わった事を認識すべきです。
日本政府に求められているリーダーシップとは、
先進国と途上国の妥協点を探すことではなく、
途上国と途上国の人々が本当に求めている核心に向き合い、
先進国の歩み寄りを促し、
途上国と真のパートナーシップを築き、
国際的な信頼関係を構築する為に努めることです。
その一歩となる意味あるABS議定書に向けて、
議長国というリーダーシップの機会を最大限に生かし
新しい国際社会の構築に貢献するべきです。
また、現在はABS議定書の足かせとなっている日本やその他の先進国の産業界の協力が、
何よりも重要である事は言うまでもありません。
『「途上国」「先進国」という概念が
この世界からなくなって初めて
私たちは持続可能な社会を手に入れることができる。
豊かな国に住む私たちが ABS議定書を理解するために必要なのは、
ABSの技術的・法律的な知識ではなく、 途上国の人々や先住民族の人々の生活を
彼らの立場になって考える 想像力である。』 COMPASS JAPAN
下記、行動をともにしている海外NGO、Third World NetworkのChee Yoke Lingの
これまでの経緯についてをご記事です。ご参照ください。
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「新しい協定(ABS議定書)は未だ困難なまま」
10月22日名古屋(Chee Yoke Ling)
現在開かれている2年に1度の生物多様性条約締約国会議は今日の午後、遺伝資源へのアクセスと利益配分の新しい協定の交渉の進行状況に注目した。
2005年から始まった交渉を続けるため、18日(月)に設置された非公式協議(ICG)の共同議長であるカナダのTim
Hodges氏は、議定書草案の完成について「我々はたくさんの重要な前進を遂げたが、まだ仕事を終えてはいない」と報告した。
もう一人の共同議長であるコロンビアのFernando
Casas氏は、合意された議定書草案のテキストの条項のリストを紹介し、「全てが合意されるまで、何も合意されない」という国連のルールについて言及した。彼はまた、合意に達していない議定書の中核のである未解決の課題についても述べた。
生物多様性条約第10回締約国会議は、10月18日から29日まで日本の愛知県名古屋市で開かれている。生物多様性条約の履行に不可欠の重要な決断を採択するため来週にも到着する閣僚達に、代表団にもプレッシャーがかかる。
遺伝資源へのアクセスと利益配分の議定書に加えて「改訂版戦略計画、生物多様性ターゲットと指標」そして「生物多様性条約の3つの目的の達成を支援する資源収集戦略」が議題となっている為、このCOPは特に歴史的な会議であるといえる。
木曜夜(10月21日)に開かれた記者会見では、ブラジルのチーフ交渉人であるPaulhino Carvalho
Neto氏が名古屋COP会議は、3つの構成要素がパッケージとして扱われるべきであると断定的に述べた。ABS議定書なしでは、戦略計画もなく、財政計画がなければ戦略計画もない。
彼はまた、このパッケージがなければ、来週はもう一つの「コペンハーゲン」になるだろう、と述べた。
(論争と失望に支配された2009年コペンハーゲン国連気候変動枠組条約締約国会議参照)
ブラジルはまた、ABSプロセスの中で共通のポジションで交渉するLMMCグループの議長でもある。
LMMC(the Like-Minded Group of Megadiverse
Countries)は生物多様性の豊かな国のグループで、ボリビア、ブラジル、中国、コロンビア、コスタリカ、今後民主主義共和国、エクアドル、インディア、インドネシア、ケニア、マダガスカル、マレーシア、メキシコ、ペルー、フィリピン、南アフリカ、ベネゼエラが加盟している。
途上国側は、3つの成果はパッケージの1部分であると何度も繰り返し主張しており、9月22日に開かれた国連総会の生物多様性セッションの閣僚級会合においても幾人もの大臣によって明確に主張されている。これは、保全、持続可能な利用、遺伝資源へのアクセスとその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分、の生物多様性条約の目的に沿っている。(SUNS
#7004 Friday 24 September 2010参照)
日本の環境大臣松本龍氏は10月18日のCOPの開会式で、遺伝資源へのアクセスと利益配分の国際体制の合意と、その利益を生物多様性の保全に繋げていく事が重要だと述べた。
地球のすべての生き物のへ利益と貧困軽減への貢献として、世界、地域、国レベルで生物多様性の現在の喪失率を2010年までに大幅に削減させる」という生物多様性の締約国がほぼ10年前に掲げた目標は実現しなかった。
生物多様性条約の目的である利益配分の実行の欠如による途上国の失望がますます増加している中で、生物多様性条約の効果的な履行は、ABS議定書を中心として最も重要な挑戦となっている。
2010年の7月に生物多様性条約のABS作業部会によって地域間交渉グループ(ING)が議定書のテキストを交渉するため設置された。地域間交渉グループの2回目の会議は9月21日、議定書草案の鍵となる部分で深い相違が残ったまま終わった。
地域間交渉グループの終了と第9回ABS作業部会の閉会とともに、COPは非公式協議グループ(ICG)を設置することを決め昼も夜も交渉を続けたが、10月22日の期限までに最終結論を出すことは、またもできなかった。
ABS作業部会の共同議長であるCasas氏とHodges氏は、進展度調査会合で
非公式協議グループを延長し、週末も交渉を続け来週の月曜のCOP全体集会で報告することに合意した。
Hodges氏は「私たちの任務への焦燥感がある。交渉人たちがこのテーブルに明日の3時に戻ってくるとき、中心へ動くよう(合意に達するよう)もっと準備して戻ってくることが重要だ」と強調した。彼は、非公式協議でのグッドウィル(goodwill)の継続を呼びかける一方でまた、代表団に「残っている鍵となる課題を解決する為に改正したインストラクションで戻ってくる」ように催促した。
未だに、主要な未解決の課題に不一致があるのは、幾つかの先進国が強硬な姿勢を貫いているからである。これらの課題は、途上国と先進国の線に沿って分裂している。
●コンプライアンス
これは議定書の“中心の中の中心”である。
(義務的チェックポイントや遺伝資源と関連する伝統的知識の利用のモニタリング、追跡、報告における義務的開示要求に合意がない)
●伝統的知識
遺伝資源に関連する伝統的知識の利用者が先住民族や地域社会から直接資源を得る以外の形で資源を得た場合に、利益を配分するために、締約国に対策を取らせる事を義務とする条項。
(途上国は、公共で手に入る伝統的知識、例えば口頭や文書など、が利用された場合、そのような伝統的知識の保持者との利益配分がない現状を直す術を模索している)
●人間、動植物の健康に関連する緊急時の遺伝資源への迅速なアクセス
特にEUやオーストラリアが、もっと柔軟性を持って交渉テーブルに戻ってこない限り前進する余地がない非常に議論を呼び起こす課題である。彼らは「緊急事態以前」や緊急事態の「回避」のような発想で緊急時が発生する前の段階で迅速なアクセスが欲しいのである。
途上国は、公正へ衡平な利益配分の対応保証なしにアクセスを提供する為の義務を拡大する結果になることを懸念している。これは、世界保健機関(WHO)の制度において無償で鳥インフルエンザウイルスを共有したが、世界保健機関の1部分である先進国の機関がこれらのウイルスの遺伝配列に特許を取得した後でのみ、特許が取られた事を知ったという幾つかの途上国の経験に基づくものである。
加えて、そのようなウイルスから作られた特許取得済みの診察キットとワクチンは高くて買えず、ウイルスを提供した国々には利益配分はなかった。
●議定書の範囲
未解決の課題は
緊急目的の迅速なアクセスに関する条項で取り扱われるであろう、人間の病原菌の除外の提案と
議定書発行前までに取得された遺伝資源の利用からの利益配分について。
週末を使っての非公式協議の延長を支持する中で韓国は、進展度調査会合の中で、「この週で、鍵となる課題への理解を広げることでABS議定書の大きな一歩を踏めたが、まだ長い道のりが残っている」と述べた。先週までのモメンタムをもとに明日から私たちが努力を強めたなら、議定書を「手にすることができるだろう」と述べた。
アフリカグループを代表してマラウイは、ABS交渉の遅い進行でありながら鍵となる課題は解決されつつあることを指摘した。「この名古屋ではもう時間的余裕はない。私たちはカリやモントリオールで機会があったにもかかわらず時間を無駄にした」と主張した。先進国に、すべてに受け入れられる結果に向けて交渉するように迫り、「ABSは私たちの条約への冠の中の宝石である」と付け加えた。
EUは「カリ(3月にコロンビアで開かれた作業部会)から困難な旅が続いているが、我々は前進していると感じている。まだまだ終わらせなければいけない仕事が残っているので、非公式協議の延長を支持する」述べた。
ラテンアメリカカリブ諸国グループ(GRULAC)を代表してメキシコは、非公式協議の前進については、慎重に楽観視しなければならない理由がある。しかし我々は、さらに時間を使うこと、交渉の結論の期限を延長することは支持する、と述べた。
出典:SUSN South-North Development Monior. http://www.sunsonline.org/
Chee Yoke Ling, Third World Network http://www.twnside.org.sg/
訳責:寺澤 彩 COMPASS JAPAN